取り戻す

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ああ、もう6月だなあ、なんて思って、しかし梅雨空になかなかならないもんだなあ、と、夏に近づいた日射しに照らされて陰影のできる山々を眺めていた。1年前も同じようにこの時期の風景を見ていた気がする。

夏になって思い出すのは自転車の記憶で、19〜20歳くらいのころ、なんだか意識高めの時期があり、自分を鍛えるのにハマって、毎日健康のために長いウォーキングだとか自転車漕ぎだとかをやっていた。もともと不安症気味な性格で、考えすぎて前に進めない部分があったのだけど、殻を破りたくて、自分の街の知らない道とかを通ってみることに凝っていた時期だった。自分の足で冒険するたびに、自分の視野が広がっていく感じがして楽しかった。こんなところに来てしまった、どうしよう!と思っても、だいたいはなんとかなるし、実際なってきた。この時期、長年かけて自分の中に蓄積していった、色んな苦手を克服していった。一人で行動するのが不安だったけど、一人で行動できるように練習して、歯医者が苦手だったけど、自分を変えたいから歯医者に行って、慣れないセミナーなんかに行ったりして。普通の人からしたら小さなことだけど、ひとつひとつにとんでもなく勇気が必要だった。その原動力はなにかと言ったら、「働くため」だった。「デザイナーとして働きたい」という目標があったから自分を鍛えられた。

今は、なんだか大きな原動力を見失っていて、地に足がついていない感じがする。自転車を見るたびに、「ああもう、あの頃のように遠くまでは行けないのかなあ」と思ってしまうし、日常生活でも大なり小なり常に不安がつきまとっている。病気を気に、数年前の自分に戻ってしまったかのようだ。これが地の性格なんだから仕方ないのか、と思ってしまう時もあるけれど、数年で行動的になった昔の自分も忘れてはいない。

またあの頃に見た景色を、自分の目でもう一度見に行きたい。そう思い続けられる限りは生きていける気がする。